オーストラリアでのツリークライミング事情(3)
【 オーストラリア・ツリークライミング・チャンピオンシップでのTree Climbing & Rigging Workshopに参加して 】
Director川尻秀樹 レポート
チャンピオンシップでは、日本でのジョンさんの活動が注目されているお陰で、特別にTree Climbing & Rigging Workshopに参加することが許可されましたので、その一部を報告します。
1.Tree Climbing講習
このTree Climbing & Rigging Workshopでは、仕事として剪定作業などを実施するためのツリークライミング技術を学ぶものですが、一般的には数万円の参加費が必要となります。
オーストラリアではこのような仕事をするクライマーが引き起こす死亡事故が、昨年一年間だけでなんと12件も発生しており、安全危機管理が強く叫ばれているそうです。
講習では、参加者全員がヘルメットやグローブを装着してから、使用器具の名称と使い方などの説明がありました。
フリクションセーバーの利用は、レクリエーションではハウススリーブ主体ですが、仕事としてのワーククライムではリングセーバーとその変化系が主流で使われています。リングセーバーのスリング部分の長さも約50cm~200cm以上のものまでと様々あります
クライミングについての説明などが終了したら実践です。使用するサドルはすべて作業用のものです。作業用とレクリエーション用の最も大きな違いは、レッグパッドではないでしょうか?
作業では作業効率、スピード中心になり、樹上では多くが立ち上がった姿勢で過ごします。これに対してレクリエーションでは、あわてず、ゆっくりと樹上空間を楽しむため、座った姿勢で過ごすことが多いため、ワークとは異なるサドルが有効となるのです。
写真-7に見られるように、ジョンさんのサドルの横には樹上で体を固定、確保するためのランヤードがついています。また、ジョンさんのヘルメット(黄色)と向き合っている人のヘルメット(橙)は、ともにチェンソーなどでも切ることができないケブラー繊維が入っている特殊なワークヘルメットです。
作業では作業効率、スピード中心となるため、体力にものを言わせたクライミングが一般的で、その代表がロープを直接足に絡めて登るフットロッキングです。世界中のチャンピオンシップでは必ず、スピードの速いフットロッキングが使われ、一見すると格好良くて、上級者っぽいため、少しあこがれる方法です。ただし、フットロックするとロープへの砂や泥の混入などロープの損傷が著しくなり、また、両足でロープを固定するため、足首の捻挫などの事故も多発しています。
2.Rigging Workshop
午後からは剪定方法やその剪定した枝をロープで吊りながら安全に降ろすためのRigging講習会です。
樹上にあがったトム・グリーンウッドさんがチェンソーで枝を切ります。一般的に剪定などでは、枝を下に切り落とすため、チェンソーの受口を下側に作るように考えがちです。しかし、トムさんは剪定する枝より上の枝にプーリーを設置し、そこから剪定する枝を吊して切るため、上側に受け口を作ってから、下から追口を切りました。剪定された枝は地上スタッフがロープを操作して、ゆっくり降ろしてきます。
私たちがTree Climbing & Rigging Workshopに参加している間には、ロープ・スプライスのワークショップや、クロロフィル測定で樹木の健康調査、都市の街路樹デザイン、空気圧で土壌を吹き飛ばして樹木の細根を掘り出すAIR-SPADE利用などの、様々なワークショップが開催されていました。
ロープ・スプライスのワークショップでは Scott Sharpeさん(本稿のTREE TALK -1に紹介済みのARBORISTで、YALE社のNo1スプライサー)が講習をしていました。
講習会場で彼と話をしていると、ジョンさんオリジナルで、特別注文で作成してもらったブルーロープが、彼の手元にあったので尋ねると、「このロープはDRTには最高だね!」と返事が返ってきました。