第23回「みどりの感謝祭」ツリークライミング体験&JTCC2013最終決定戦

2013年5月11~12日、東京の日比谷公園で、第23回森と花の祭典「みどりの感謝祭」でのツリークライミング体験会と、JTCC2013 ジャパンツリークライミングチャンピオンシップ最終決定戦が開催されましたので、その概要を紹介します。

ツリークライミングチャンピオンシップ参加選手と審判団

二日間にわたるツリークライミングイベントのうち、一日目は一般の方々を対象とした体験会、二日目はカナダ トロントで開催されるISA(International Society of Arboriculture)の世界大会出場選手を選抜するツリークライミングチャンピオンシップです。

今回はアメリカのISA本部からISA理事長のTerrence P. Flanagan(テレンス・フラナガン)さんとISA最高統括責任者のJames R. Skiera(ジェイムス・スキエラ)さんが来賓でお越し下さいました。これもJAAファウンダーで、ISA日本代表であり、中部大学教授であるDr. John R. Gathright(ジョン・ギャスライト)さんの働きかけと、JAA会長であり樹木医である原孝昭 文吾林造園株式会社社長のご尽力によります。

体験参加者が子どもであれば、その目線に合わせて説明するジョンさん

イベントには子どもから大人まで、様々な体験希望者が訪れます。体験最初のポイントの一つに、参加者の目線で話すことがあります。ジョンさんは常に子どもたちの目線に合わせて、体を低くして語りかけます。イベントでは大人の満足も重要ですが、やはり主役は子どもたちです。その子どもたちの目線に合わせることで、信頼と親近感が増すのです。
ISAのジムさん(左後ろ)もテリーさん(右後ろ)も、世界最高水準のツリークライミングイベント技術に興味津々。

体験参加者を笑顔にするインストラクターの存在

この日のメインインストラクターは大西さんとクマ(小島)さんでした。写真はクマさんが説明しているところ。子どもでも分かりやすく面白い説明、そうしたインストラクターの存在が子どもたちを笑顔にさせてくれます。
ツリークライミングは単なる体験ではありません。参加者各自が木と友達になる近道は笑顔でふれあえる環境をつくることです。

チャンピオンシップ参加者のギア・インスぺクション

さて、二日目はカナダのトロントで開催される世界大会出場者を決める日本選手権です。
ここではクスノキを対象にマスターズチャレンジが開催されました。
エントリーした選手は全員が使用する道具のチェックを受けます。もしも強度保証のないものや適正に欠くギアがあれば使用できません。また、この時点で適正なブーツやセーフティグラス、ヘルメットなどが無ければ失格になります。

松岡さんのスローライン操作風景

この競技は早さを競うものではありません。見学者の中には、「自分の方が早くできる」などと発言される方も見えますが、早くても危険であれば減点されます。早さよりも、安全で安定した樹上移動が最大のポイントです。
これは今回、チャンピオンになった松岡さんのスローライン操作風景です。地上から20mほどの高さのアンカー(木の股)に一回でスロー完了。
「さすが」の一言。写真奥に見えるバッケト車のカメラにも動じず、見事なスローラインさばきです。

松岡さんのアクセスラインエントリーです。これは個別競技でもあるセキュアード・フットロックでのクライミングです。海外のツリーワーカーはこの方式で樹上にあがり、樹上ではディステルやブレイクスを利用したDRTシステムで仕事をします。

樹上での宇治田さん

この写真はクスノキ樹上での宇治田さんの様子です。樹上では冷静な観察力とバランス感覚が勝負を分けます。
松岡さんも宇治田さんも、他の選手たちも私が足下にも及べないほど、素晴らしい動きで樹上のチェックポイントをクリアしてゆきました。

樹上での課題は4つ。
Handsaw Station が2つ。 Pole Pruner Stationが 1つ。Lim Walk Stationが 1つです。つまり手ノコ持参で樹上にあがり、枝先につけてあるベルを手ノコで鳴らします。作業をする場所では必ずランヤードで体を固定しなければなりません。
また、リム・ウォークでは枝先に荷重がかかりすぎると、ブザーが鳴って減点となります。

ハンドソー・ステーションに移動する宇治田さん
上の写真の左側のバッケトから見た地上の様子

どのステーションもロープをとりつけるアンカーポイントによって、難易度が大きく異なります。宇治田さんはいつもと変わらぬ軽快な動きで、見ていても気持ち良さを感じました。

ポール・プルナー・ステーションでベルに挑む宇治田さん

ポールは必ず両手で持たないといけません。そしてランヤードが掛かっていること。これまた結構大変な作業なのですが、参加者は皆、いとも簡単そうにこなしていきました。

優勝した松岡さんの表彰式

松岡さんは177ポイントで優勝。これでカナダのトロントで開催される世界大会に日本代表として出場します。 ISAのテリーさんから表彰状を、ジムさんから景品を受け取りました。

日本大会と選手についてコメントするISAのテリーさん

テリーさんからはツリーワーカーという仕事が定着しているわけではない日本で、これほど技術のある選手たちを見ることが出来てわくわくした。日本の人たちに今後も期待する。  「観衆のみなさんも有り難う御座いました」などと、身に余るようなお言葉を多数頂きました。

ISAとJAAの調印式

今回の重要な「Memorandum of Understanding between The International Society of Arboriculture and Japan Arborist Association」。
ISAがJAAを日本で唯一認めた団体としての第一歩が記されました。記念すべき2013年5月12日となったのです。

ジョンさん、テリーさん、ジムさん、原さん、司会役の安藤さん

今回は日比谷グリーンサロンでISA講演会、ジョンさんによる講演会なども開催されました。講演会に先立ち、主役の面々の挨拶、左よりジョンさん、テリーさん、ジムさん、原さん、そして司会の安藤さんが写っています。
全世界に50支部組織をかかえるISAの組織体制についての講演やジョンさんによる日本のこれまでの歩みなどの報告があり、改めてISA組織の大きさと、世界的な広がりを感じたのです。
ここではISAからジョンさんの奥様にもスペシャルプレゼントが飛び出し、楽しくもあり、有意義な時間を過ごしたのです。


レポート 副代表 川尻秀樹