JTCC2015 予選・本選

JTCC2015のジャッジ、選手、スタッフ一同

今回で7回目となるツリークライミング日本大会が埼玉県深谷市で開催されました。この大会はISA(International Society of Arboriculture)主催のITCC(ツリークライミング世界大会)に参加するためJAA(原孝昭会長)が日本全国のCertified Tree Climberに参加を募って実施されました。
この大会開催に当たっては、ISAのBoard Member(取締役員)のDr. John GathrightさんがISAと協議し、原孝昭JAA会長兼JTCC2015実行委員長、久保田和彦大会部長、高橋晃展副部長兼ヘッドジャッジと会場設営責任者の森田弘行さんが協力して大会開催にこぎ着けました。
そして高橋さんをヘッドジャッジとする森田、小林の3人のメインジャッジ、近藤、小木曽、川尻の樹上及びリムウォークジャッジ、そして総勢約30名近くのスタッフのお陰で開催することができました。

今回の会場の「花園市場グリム」は大里樹苗造園株式会社の富田重直社長の協力の下、以前から現場を利用させて頂いている森田弘行さんが会場準備し、久保田和彦大会部長、高橋晃展副部長兼ヘッドジャッジが下準備にあたりました。
また富田社長や奥様には事前準備の日やJTCC2015当日の昼食を用意して頂き、何よりも樹齢約100年になるモミジバスズカケノキ(Platanus acerifolia)を提供して頂けましたこと、深く感謝致します。

クライミングする樹齢約100年のプラタナス

今回の対象木プラタナス(スズカケノキ)とは

プラタナスと呼ばれることが多いスズカケノキですが、プラタナスとは学名のPlatanus を読んだものです。 日本で見かけるプラタナスはスズカケノキ属の3種、スズカケノキ(Platanus orientalis)、モミジバスズカケノキ(Platanus acerifolia)、アメリカスズカケノキ(Platanus occidentalis)が見られ、いずれも明治時代に渡来し、新宿御苑には当時の個体があるらしい。
属名のPlatanus(プラタナス)は、ギリシャ語の「platys(広い)」が語源で、大きな葉に由来します。ちなみに小種名のorientalisは「東方の、東部の」、acerifoliaは「カエデ属に似た葉をもつ」、occidentalis は「西方の、西部の」という意味です。

プラタナスの果実

(1)スズカケノキの名の由来は 
和名のスズカケノキの「スズカケ」は、垂れ下がる果実(集合果)の姿が山伏(山で修行する人)が着る麻でつくられた篠懸(すずかけ)衣についている房に似ていることから「篠懸」とする説が一般的です。  しかし「鈴懸」の説として、果実が楽器の鈴に似ていることからとするものもあります。

プラタナスの葉と果実

(2)スズカケノキの見分け方  
スズカケノキには前述のように1)スズカケノキ、2)モミジバスズカケノキ、3)アメリカスズカケノキがあるものの区別が難しく、その外見的特徴を示すと、
1) スズカケノキは集合果が果軸に3~5個ついており、樹木が滅多に見られない。
2) モミジバスズカケノキは集合果が果軸に1~3個ついており、樹皮がよく剥がれ、街路樹として多く植えられている。
3) アメリカスズカケノキは集合果が果軸に1個のみで、樹皮は剥がれない。街路樹として植えられている。

2.JTCC2015予選

第7回JTCC2015(Japan Tree Climbing Championship日本ツリークライミングチャンピオンシップ)は日本国内の代表選手選考会であり、優勝者は3月にアメリカのフロリダで開催されるISA(International Society of Arboriculture)主催 ITCC世界大会への出場権を手にします。

大会前のギアインスペクション

(1)受付を開始後に、参加選手は使用する予定の道具類のギア・インスペクションを受けます。ここで使われる道具には使用規定があり、メーカーが強度保証したことがしっかり示してあることが基本です。
また競技で使用するハンドソーは鋸刃が無いものか、刃をテーピングしたものを使います。またハンドソーの大きさは直線上で13インチ(33cm)以上かつ23インチ(58cm)以内の長さのものしか使用できません。
このギア・インスペクションで動作が不適切なカラビナなどがあれば、審判によって一時的に没収されます。

JTCC2015開会式

(2)大会を始める準備が出来たら、「開会式」です。最初に主催者であるJAA会長兼JTCC2015大会実行委員長の原孝昭さん、ISAのBoard Member(取締役員)であるDr. John Gathrightさんが挨拶され、その中ではISA Executive DirectorのJim Skieraさんからのメッセージもありました。

競技に先立ち御神酒を捧げ、二礼二拍手一礼

(3)大会に先立ち、原さんを筆頭にジャッジ(高橋、小林、森田、小木曽、近藤、川尻)が塩と御神酒で、大会の無事を祈願しました。もちろん二礼二拍手一礼もしました。

競技者にデモンストレーションする高橋さん

(4)予選に参加するのはくじ引きで、関野暁さん、渡邉真威さん、副島朋亮さん、宇治田直弘さん、高野大輔さんの順となりました。
そこでヘッドジャッジの高橋さんがルール説明を兼ねて、ワーククライムの試技をデモンストレーションしました。現役選手をしのぐスムーズなクライミングとバランスの良さで、観客からざわめきも出ました。

予選に参加した選手のハンドソーステーションへの移動風景

(5)樹上にはハンドソー・ステーションやポールソー・ステーション、リムトス・ステーション、リムウォーク・ステーションなどがあり、そこに至る技術と安全性、的確性を審査します。

予選に参加した選手のポールソーステーション

(6)横に張り出した細い枝の先にポールソーがセッティングしてあり、そこに到達したら、ランヤードをかけて、スタンドクリアとコールし、ホールソーでベルを鳴らします。

予選に参加した選手のランディング

(7)最後には目標となるランディングポイントへの着地です。プラタナスの幹から3m程度離れた場所に着地するのも至難の業ですが、選手の多くはなんなくこなしていました。

予選の結果発表

(8)5人の選手がマスターズに進むための予選会に挑戦し、見事一位は宇治田さん、二位は関野さん、三位は渡邉さん、四位は副島さん、五位が高野さんでした。なお、五位の高野さんは終盤で、基準より少し太い枝がロープに掛かって折れたための順位で、うまく行けば二位であった可能性が高いです。

JTCC2015 本選

JTCC2015のマスターズ・チャレンジ、ここに参加できるのは予選での成績上位2人と昨年のチャンピオンです。マスターズ優勝者は3月にアメリカのフロリダで開催されるISA(International Society of Arboriculture)主催のITCC世界大会への出場権を手にします。

出場選手はクライミング順に関野暁さん、宇治田直弘さん、昨年のチャンピオンである松岡秀治さんです。
マスターズでは周囲のインスペクション(電線の有無、安全確認、注意事項)から始まり、スローラインを約18~20mに掛け、ロープセッティングしてクライミング。樹上では2ヶ所のハンドソーステーション、1ヶ所のリムトス、1ヶ所のリムウォークをこなし、最後に樹上から人工物を取り除けば競技完了。 今回の制限時間は30分です。

マスターズ第一競技者の関野さんのクライミング

マスターズ一番手の関野さん、関野さんは高さ約18mにアンカーを取り、セキュアード・フットロックでクライミングを開始。
毎年参加しており、普段の仕事でも利用しているだけあって、スムーズなクライミングは素晴らしい。

関野さんのハンドソーステーション

マスターズのハンドーステーションは2ヶ所あり、予選よりも難易度が高い場所に設置されています。
関野さんもステーションに到達するとランヤードをかけて、スタンドクリアとコールし、ハンドソーでベルを鳴らしました。すると見学者が一斉に拍手。

マスターズ第二競技者の宇治田さんのインスペクション

宇治田さんは最初のインスペクションで、しっかり周辺環境の安全確認と街灯や家屋の有無を聴衆に聞こえるようにアピールしていました。さすがに過去日本チャンピオン経験者は違います。

宇治田さんのボトムアンカー

宇治田さんはSRTのレスキューボトムアンカーを作成。レスキューできる長さの確認もしっかりアピールされ、いつもながらのスムーズなクライミングに入りました。

宇治田さんのリムウォーク

宇治田さんのリムウォークはお見事。対象となる枝に荷重をかけることなく枝先まで移動し、ベルを鳴らすと素早く引き返していきました。素晴らしい。

宇治田選手のハンドソーステーション

宇治田さんのハンドソーステーション。ここは予選でポールソーが設定されていたステーションです。しかしマスターズでは、ベルの位置がより一層枝先に移動しており、なかなか到達しにくいのですが、さすがマスターズに出場する選手はみな、難なくこなします。

マスターズ第三競技者の松岡さんのクライミング

最後には、前年チャンピオンの松岡さん。宇治田さん同様に周囲のインスペクションなど完璧にこなし、ロープレンチ(Rope Wrench ZK2)とアセンダー(ISCRP240A)を使用していました。

松岡さんのリムウォーク

松岡さんのリムウォークも宇治田さん同様、対象となる枝に荷重をかけることなく枝先まで移動していました。

松岡さんのリムトス

リムトスでは樹上にセットされたバケツに入っているリム(棒)を地上に設定された入れ物に投てきします。この時に、リムが縦になって飛んでくると跳ね返って入れ物から出てしまう確率が高くなります。単なるリムでも、地面に加わる衝撃を最小限に抑えるのは横向きに接地するよう投げる必要があり、実践的なのです。

松岡さんのハンドソーステーション

松岡さんのハンドソーステーション。宇治田さん同様により一層枝先に移動されたベルまで簡単に到達していました。素晴らしい。

ヘッドジャッジである高橋さんからマスターズ結果発表

さて、3人のマスターズ・チャレンジの結果です。3人のジャッジの採点、ボーナスポイント、マイナスポイントを計算して順位が決まります。
ISAを代表するジョンサンとJAA会長の原さんが見守る中、ヘッドジャッジの高橋晃展さんが結果ボードを示しました。
一番手の関野さんが155.67 Point、二番手の宇治田さんが226 Point、三番手の松岡さんが185.33 Pointで、宇治田さんの優勝です。

左からISAのDr.Johnさん、第三位の関野さん、優勝の宇治田さん、第二位の松岡さん、JAA会長の原さん

各選手が表彰と商品を受け取り記念撮影です。素晴らしい健闘ぶりと技術を見学者全員が拍手でたたえました。

ツリークライミングチャンピオンシップのアワォード受賞の渡辺さん

最後に、ジャッジの高橋、小林、森田、小木曽、近藤、川尻が今回の予選も含めた出場者の中からツリークライミングのSpirit of Award(敢闘賞)を投票で決めました。
その結果、渡邉真威さんが受賞決定。副賞の荷下ろしギア(TREE PRO RIGGER)を手中に収めました。おめでとう御座います。

事業部長の久保田さんから関係者全員に感謝と大会終了の宣言

最後に本大会を無事に終えることができ、フィールドを提供して下さった「深谷緑の回廊」花園市場グリムの富田社長さんやISAのジョンサン、会場設営に尽力された森田さんに対するお礼も含めて、久保田大会部長からお言葉を頂いたのです。

なお、このJTCC2015開催にあたりまして、ラフターを提供して下さった文吾林造園さん、スポンサー企業である小木曽グリーンターフさん、ユーエム工業さん、津々美造園さん、Tree Pro、New Tribe、ISC、Weaver、Teufelberger、Yale Cordageに感謝致します。

レポート 副代表 川尻秀樹